エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング    vol.133 タニヒラタカゲロウ/竹田 正

2023年04月28日(金)

仙台東インター店


 本格的な春が訪れた頃、目立つ程の大きさでもって羽化するカゲロウがいる。その姿はエルモンヒラタカゲロウにそっくりであるが、それに比べ羽化時期が明らかに早いのだ。そのカゲロウはタニヒラタカゲロウという。

 地域によっては3月に見かけると言うが、私が釣り歩く渓流では「里の桜は見頃を迎え、山の渓流沿いの桜はまだつぼみ」という季節感が羽化期の始まり、というイメージで捉えている。4月下旬、標高の低い里付近のヤマメを釣る渓流から始まり、上流域のイワナ釣りでは5月中旬以降に見かけることが多い。春の釣りに係わってくる大きめのカゲロウとしては、ナミヒラタカゲロウの他、里の川であればマエグロヒメフタオカゲロウがクローズアップされてくるのだが、タニヒラタカゲロウ、なかなかに侮れない存在なのである。

 タニヒラタカゲロウのニンフは早い流れを好むため、素早く羽化する必要があるのだろう。そのため羽化様式は「水中羽化」である。ダンの体長は14mm程でエルモンヒラタカゲロウと同等サイズであるが、体色に白さを感じるエルモンヒラタカゲロウに比べ、全体的にやわらかな褐色を帯びた色合いで、腹部やウィングの色合いは黄色みが強い印象である。前翅付け根の斑紋は「点状」のため、エルモンヒラタカゲロウ等の「L字紋」やウエノヒラタカゲロウ等の「線紋」との区別がつく。また卵の色はくすんだ緑褐色、グレーオリーブ系の色合いなので、メスを見つければ区別の更なる手掛かりになる。

 ヒラタカゲロウ類のニンフの生息場所は石が噛む流速のある瀬となるので、たとえドライフライに出てはこなくとも、ニンフパターンで怪しい流れに探りを入れてみる。羽化期に入ったニンフは活発に石の表面を動き回っているはず。それをヤマメたちは狙っているとの目論見である。

 
タニヒラタカゲロウのダン♂

 
タニヒラタカゲロウのスピナー♂

 
タニヒラタカゲロウのダン♀

 
タニヒラタカゲロウのスピナー♀ 右写真は卵塊が出てきている産卵直前の個体


タニヒラタカゲロウかな?と思われるニンフ
ダンのみならず、ニンフもエルモンヒラタカゲロウと非常に良く似ている。エラにある斑紋の具合で見分けると言うものの、やはり個体差もあるようで、肉眼での観察でそれを区別するのはいささか困難な感じである。


ライトケイヒル


サイズとカラーを合わせたパラダン。♀のイメージをリアルに表現するなら、アブドメンにオリーブ系のダビングを少々、施してみたい。


ヒラタカゲロウタイプのニンフパターンの背面


ヒラタカゲロウタイプのニンフパターンの側面。扁平な感じを表現したい。

タニヒラタカゲロウ掲載関連記事リンク vol.94 vol.102 vol.118 vol.126

THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.133/ T.TAKEDA
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