エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング    vol.102 平成31年 4月の釣り。林道で世間話!?/竹田 正

2019年05月10日(金)

仙台東インター店


 4月にはいると朝の最低気温がぐっと上がってきた。季節外れの雪が降って大荒れ、激渋の日もあったのだが、季節の進みが早いお陰で渓魚の動きは概ね活発だった。同じく釣り人の動きも活発。もちろん山の動物たちも。一方で、解禁当初から相変わらずの渇水続きであったためか、早くも下旬の頃には、フライに対してシビアな選択をしてくる魚も目立つようになってきた…。


4月上旬のコト。農作業をしているおやじさんに挨拶しながら家前の大淵へ入渓。早速出迎えてくれたのはヤマメ。#12のパラシュートをアッサリ、バッサリと、食べてきた。いいね。



ヤマメをリリースして再度キャストしてみると、次いで出てきたのは尺イワナ。岩盤際からぬーっと流芯に出てきて、ゆっくり、しゅぽんと、吸い込んだ。これも#12パラシュートを飲み込んでいた。体色も良好、太り始めている。やはり今シーズンはイワナの動き出しが早い。


本日のランチパックはアサツキサンド。入渓時におやじさん家の前でちょいと摘んでおいた。ネギ特有の辛味と甘みがツナマヨに合う。春はいろいろ拾い食い(?)ができる。大きな楽しみの一つ。


4月に入ってヤマメの出方が素早くなってきた。流れの筋への付き方も良い。ドライに出てくる感じがシーズン本番という雰囲気。


ちびこのヤマメたち。沢山食べて早く大きくなれ!
 
 車に戻り着替えていると、民家のおやじさんが寄って来た。「どだ、釣れだかや?」「釣れた釣れた、楽しめました。そこの淵、朝入ってすぐに尺イワナ釣れたし」「おんや、どれ見せで」「あ、放しときました。また釣れるように」「なんだべ。放しだんが、誰がに釣られて終わりでねが」「んだね~」…。本日も沢山の渓魚達に出合えました。




 4月の4週目のコト。サクラマス狙いで本流に入ってみたけれど、釣りたい場所はいずこも流れが効いていなくて絶望的。水溜りみたいな流れでは、フライを流していてもワクワクしないので、山の方へ入ってきた。
 朝、ちらほらと開花。仙台は散り始め、三陸の海沿いでは満開だったのだけれど、このあたりはこれからみたい。梅も桜も同時みたいな感じで一気に季節が進んでいる。


魚はそこそこ見えるし、フライを追ったりつついたりするのだが、如何せん食い込まないことがほとんど。掛ってもすぐに外れてしまう状況。渇水のためか先行者の影響なのか。渋い状況でやっと掛ったイワナ。ネットですくうとフックはポロリ、すぐに外れた。


大物シマヘビ。穴から出てきて大分経っているのか、つやつや。カッコイイ顔を撮ろうとしたら、シュルシュルっと。


ナミヒラタカゲロウのスピナー。脚とテールが脱落していた。


落ち込みの流れが当たる倒木の前からバシッと出てきたヤマメ。渋い魚相手が続いていたので気分爽快に。


流れの芯でヤマメ、脇でイワナが出てくる。フッキングはどれも危ういものだった。


えぐれた岩盤脇の沈み岩。ここで出なきゃ嘘だろう、とフライを流すと左から右にヘッド&テール、一発で出てきた。しかし全く手応え無くフライが抜けてきた。あれれ、食っていない。これは時間かけても仕留めようと心に決め、#12パラシュートから#14CDCスペントに結び替えた。一投め同じコース、出ない。二投め少しアウト側に外して流すとバッサリ食ってきた。体高のある立派なヤマメ。満足の一尾なのだけれども、なんだかもっと釣りたい。


ツクシとワサビの群落。妙な取り合わせ。


早く新緑の季節にならないかな~。あっという間なのだけれども、待ち遠しい。


タニヒラタカゲロウのダン♀。メスは卵の色で腹部がくすんだ緑色を帯びている。エルモンヒラタカゲロウと非常に良く似ているが、前翅の斑紋の具合と卵の色合いで区別がつく。羽化期はタニヒラタカゲロウの方が早い。こういうのがわんさかハッチしていると景気が良いのだけれど、この日は今ひとつ。


川岸の砂利場、今シーズンの一個目発見。クマの足跡。腰に下げたカウンターアソルトを確認。安全ピンを外して釣りを続行。なにせフライを喰わない魚ばかり相手にしているものだから。3月には泥付きマムシも見かけたし、昨夜はシカが騒いでいたし、春らしく生き物の動きが活発になっている。


行き止まりの堰堤で釣れてきたちびっこ。大物を期待していたのだが。今はこのサイズだけれども、夏までにぐんと育って我々釣り人を楽しませてくれる、大切な存在。


4月も末になってくるとワサビも花盛り。


釣りから上がって見ると朝に比べてつぼみがぐっと開いていた。満開までもうすぐ。あと一日か二日という感じ。山里が柔らかな色合いに染まり始めて良い感じ。優しい風景の夕暮れだった。すっかり日が長くなり、釣りの時間がたっぷりとれるようになってきた。イブニングが楽しめる季節ももうすぐ。この日は数は釣れなかったけれど沢山の魚達を見かけたので一安心。

 退渓後、上流の様子を偵察したときのコト。とことこ上がっていくと、林道に車。山菜取りかな?いやいや山仕事の二人。いろんな装備が見える。脇に車を停めて挨拶した。
 「こんにちは~」「ほ、釣りが?」「はい、下の方あまり釣れなかったから。どんなんか様子見に上がってきました」「このへんだどイワナがね?」「んですね、で何の山仕事ですか?」「シカよけのネット張りだ。食害防止、増えてんだ」「そういや、学生の頃三陸に居て、あの頃も沢山いたけど、もっと増えてんですか?」「なぬ、北里が?おめ」「はい、そうなんです」「そうが~、海沿いはここいらよりもっと増えてるな。そういや鹿児島出身の学生、よう面倒みだな、その頃車の仕事しでてや~」あらら・・・。ぽろぽろと懐かしい名前などが出てき始めて、いやもう思いもよらず話があらぬ方向へ。
 で、何を聞きたかったのか言うと、近頃キャンプの時怖いから、気になっているイノシシのこと。「オレはまだ見かげねっけど、捕獲の話は聞いているがら、岩手も結構増えてきてるんでねが~」との事でした。あ~、ちょいと心配である。


キャンプ飯。豚肉のばっけみそ炒め。綺麗に、大ぶりに、葉が開いたフキノトウが頃合いが良い。葉は刻まず、軸は刻む。豚肉に火が通る直前に軸を入れ、火が通ったところで味噌を入れ火を止める。葉を入れて手早く混ぜながら余熱で和える。野趣に富んだ香りはもちろん軸のしゃきしゃき歯触り。これはホントにビールにあう。もちろん白飯にも。


ススキかオギか、の新芽。酒の肴にいけるのだ。なるべく太くてテーパーのきついのを選んで採取。茹でて白い部分をかじる、塩付けて。癖は無くコメの様なたけのこのような、素朴な味わい。葉の香りも爽やか。さすがイネ科。米焼酎のお湯割りにマッチした。

 たっぷり自然に浸りのんびり出来た4月でした。山も川もいつもありがとう!5月になればワクワクの季節!本番到来です!

 そういえば、林道で岩手県野生鳥獣パトロールのおやじさんと出会ったときのコトも少し。
 山では不審者として怪しまれるとやっかいなので、「こんちは~」と声をかけると、「おお。どれ、釣れたが?」「んや、今朝着いてこれからやるとこです。下が水無くて、ここさ来たら水あったんで、んでやってみようかと。この沢入るの久しぶりなんだけんど。最近はどうなんでしょ?」「ここいらは~、ダム建設で切り揃えるように伐採したがらな。かぶさってねえべ。あと何年かすれば~、もっとよぐなるど思うんども。んだども、いま水いいべ、釣れんでねが」ときた。「おお、いいっすね。んで、いつもパトロールしてんのすか?」「おう。今もゲート越えて種山まで見できた帰りだ。そろそろ熊、でっから。木さ登って、木の芽食ってがら。上も見ろよ…」ということでした。確かに、釣りしていると下ばかり見ていますから。気を付けます。いろいろと貴重なお話きかせていただき、ありがとうございました!
  
THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.102/ T.TAKEDA

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