エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング   Vol.116 可憐で美しいカワゲラ。キブネミドリカワゲラ/竹田 正

2021年05月07日(金)

仙台東インター店


 鬱蒼とした森、渓に伝う林道を歩いて行く。コゴミの季節はとうに過ぎ、ゼンマイの葉も開き切っている。名もわからない巨大なシダの群れがわさわさと葉を伸ばしている。それらの独特の姿を見る度思い起こすのは太古の恐竜時代……。

 谷筋に陽の光が差し込み、暗い森に浮かび上がる冴えた黄色。ミニチュアのヘリコプターのように飛んでいるそれを、帽子を使って捕まえた。小さくて美しいミドリカワゲラだった。渓流釣りがぼちぼち本格シーズンに入るという知らせである。手が切れる程に感じた水も次第に温み始め、魚たちの動きはいよいよ活発になる。リズミカルにフライを打ちこみつつ、テンポ良く沢を遡行していく釣りスタイルへと変わっていく。

 このカワゲラはわりとまとまって羽化する印象があり、出会うと良い釣りに恵まれる事が多い。そんな時の為に、黄色を強調した♯16から18サイズのドライフライも、しっかりとフライボックスに忍ばせている。海外でもイエローサリーやリトルイエロー等々、有名フライパターンも古くから存在しているくらいで、「黄色のカワゲラ」その重要度は推して知るべしである。

 日本国内のミドリカワゲラの仲間は十数種類以上はいるらしく、未記載種も多いことから、種の同定が難しい。つまり、分類学上、研究があまり進んでいない分野ということになる。

 ちなみにカワゲラの仲間は清冽な水に生きる水生昆虫の代表で、水環境の生物指標にも用いられている。つまり、冷たく澄んだきれいな水を好む渓流魚にとっても、この水生昆虫の存在はとても大切なのだろう、と思うのである。


 

 写真はセスジミドリカワゲラの類、キブネミドリカワゲラの成虫。背部紋様が特徴的である。私が釣り歩く地域ではこのタイプを多く見かている。体長は8mm程。幼虫は岸辺水際の石などに這い上がって羽化する。岸辺の石や護岸にその脱皮殻を見つけることも多い。釣りをしていて時々見かけるのは、水面羽化状態。羽化直前に岸際で水にさらわれてしまうのか、そこまでたどり着けずに羽化が始まってしまうのか。石に登って無事羽化したまではよかったものの、一難あって落水するのか…。それら理由はともかくとして、ウィングを立てつつ、ぱたぱたしながら流されてくるので、慣れていないとカゲロウの羽化と見間違えやすい。また、水際の砂地で、砂の中から次々と這い出してくるのを見たことがある。まるでモグラが出てくるかのようで驚いた。これは特殊な例かも知れないが、「もしかすると羽化形態が異なるミドリカワゲラの類の新種?かもしれない…」などと考えると、ちょっとワクワクする。ホント、生き物はおもしろい。

 それにしてもカワゲラの成虫、その姿に古代生物の名残を感じてしまう。子供の頃に良く読んでいた恐竜図鑑にも似たようなのが載っていたような、そんな印象を受けるのは私だけだろうか?


ダビングボディにハックルだけ、フラットウィングはハックルティップでシンプルに。


視認性を確保したいシチュエーションのためにパラシュートも用意。


フタバコカゲロウやホソバマダラカゲロウなどにマッチする#18~20のパラダンを結ぶこともある。セレクティブな状況下でもサイズとカラーがマッチすればなんとかなることも多い。

 
THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.116/ T.TAKEDA
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