エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング   Vol.107 令和2年、待ちに待った解禁釣行のコト/竹田 正

2020年03月13日(金)

仙台東インター店

 やっと着いた。夜明け前の川岸。久しぶりのせせらぎが耳に心地良く響く。真っ暗な川面とともに星空も眺める。南の夜空低くにはさそり座がのぞき始め、春の訪れを告げていた。いそいそと仕事を終え、ぱたぱたと支度、わくわくの気分で夜中の三陸道をひた走ってきた。開通区間が広がったおかげで道中は快適、特に疲れを感じてはいなかったが、せせらぎをBGMに癒しの仮眠をとることにした。
 小鳥のさえずりのおかげか、スッキリとした目覚め。朝食をとり終えるやいなやウェーダーを履く。昨年の禁漁より半年近く待ち望んでいた解禁。いよいよの出動であるが、いきなり釣り始める訳ではない。シーズン始めにやるべきコト、まずは川見である。主だった流域の状況を確認し、それをもとに今後を予想するのである。ここはというところを中心に川沿いを転々とする。昨年秋の台風被害の爪痕、流れが変化しているところもあり、そこかしこで川岸などの補修工事が行われていた。ここ数年の気候の変化はどうしたものか。
 見る限り、どの流れも川床の状態はまずまずの様子。水色も良い。2月中旬の降雨で一度水が出たお陰だろう。本来ならあるべき川岸の根雪も見当たらない。水温は4~5℃、気温4℃程度で風もなく穏やか。グローブ無しでは手がかじかむ感じだが、これなら十分いけそうである。
 工事区間を避ける感じで場所を選んでいると、集落を流れる小沢に辿り着いた。ガードレール越しにちょいと沢を覗くと、ヒラキに定位するイワナが見えてしまった。いかにも流れてくるエサを待っているように見える。するともう一尾が出張ってきた。二尾のイワナはくるくると回り始めた。どうやら流れが当たる駆け上がりの場所取り合戦をしているようだ。
 ライズはしていないが、これならドライフライでいける。そう判断した。はやる気持ちをぐっと抑えロッドを繋ぐ。ガードレールの切れ目から沢に下り入渓、大きく下流に回り込んだ。イワナに悟られることの無いように、息を殺しながら低い姿勢でそろりと近づいた…。


  今シーズンの一投目にきたイワナ。狙い通りに#14パラシュートをばっさりと喰ってきた。続いてヘアズイヤーニンフにも来た。

  護岸に寄り添って釣る、里の小川のイワナ釣り。結果、ガードレール脇の淵からは3尾のイワナが釣れてきた。

  取水用小堰の落ち込みで、ぴしっとマーカーが引き込まれた。ヤマメを予想していたのだが、出てきたのはイワナだった。


一見すると冬枯れの景色。フキノトウも顔を出し、春の息吹はそこかしこに感じられた。

 目当ての大きな淵に辿り着いた。嬉しいことにライズをしているではないか。期待通りの展開に、これはいけると思いきや、見事に失敗。手始めに#18パラシュートで試してみたがさしたる反応も無く、何尾ものライズはすぐに沈黙。面倒がらず、始めからミッジで攻めればよかったのだ。フォローにニンフで探りを入れてはみたものの、後の祭りである。ライズの様子からは魚の活性はまずまず良いように感じられたのだが、少々神経質になっていたのか。解禁からすでに4日、入れ替わり立ち替わりで釣り人が訪れていたのだろう。


ライズの主は釣れなかったため、ハッチの状況を確認。流下を調べると通常のユスリカの他にオオユスリカも見受けられた。そうか、そうだよね~、なるほどな~、と言う事でここを諦め次のポイントへ移動。


日当たりのよい護岸沿い。膝ほどの深さで程良い流速の瀬。良い流れ。Yパターンにニンフを流すとすぐさま目印が飛んだ。鋭い当たりの主はヒカリになりかけの元気者だった。こういうのが釣れてくると春らしくて嬉しくなる。


淵からの流れ出し、その手前の駆け上がりに付いていた。高活性、#14パラシュートをしっかりと咥えたヤマメ。

 
続いて同じ流れをニンフでトレース、すぐさま目印が飛んだ。ヤマメとヒカリが混在していた。同じところで釣れても、ヤマメはヤマメ、ヒカリはヒカリ。鈎から逃れようと水中を走り回っている時の輝きがまるで違う。

 
ぴかぴかの魚体。背鰭の先端が黒く染まり始め、ヒカリになりかけている。サクラマスになって帰っておいで。今はまだ小さくとも、これからぐんと育って我々釣り人を楽しませてくれる貴重な存在。


落ち込み脇からニンフを滑り込ませると、目印が止まった。間髪の合わせ、どっしりとしたアタリ。おやおや、君も居たのね。白泡の下からでてきたのはイワナだった。

 
パーマークが整ったヤマメが釣れてくるとほっとする。瀬周りの魚は活性が高い。ニンフでもドライでも、魚達は良く反応してくれた。エサ取り風のアタリは頻繁にくる。


流れの筋を見極め、Vゾーンを狙いキャスト、着水直後すかさずマーカーが引き込まれた。キュンキュン走りなかなかの手応え。ややサビの残ったヤマメ。

 
まだ他にも居るだろうと続けてニンフを送り込むと、ちびっこヤマメに次いでヒカリが釣れてきた。ちびっこはその大きさに似合わず結構なアタリを出す元気者で、エサ取り風のアタリはこの子たちの仕業かも。


そのヒカリがこの日一番に嬉しい出合いとなった。ビカビカの眩い銀鱗、背鰭の先端は明瞭に黒く染まり、胸鰭などの透け具合、サクラマスを窺わせる顔など。どれをとっても完璧。町内放送のお昼を知らせるメロディと共に釣れてきた。里川の釣りはのどかなものです。


更にもう一尾、ヒカリが釣れてきた。こちらはヒカリになりかけ。


お昼を過ぎた頃、天候が急変。一陣の突風が吹いたと思いきや、数分後に風が巻き始め雨アラレ、暴風と共に土砂降り、あれよと言う間に吹雪となってしまった。天気予報通りの、春の嵐。

 せっかく調子良く釣れていたところでの、突発的強制終了。即時撤収。こういうことはたまにあることで、春の天候はホント気まぐれというコト。
 ハラも減っていたという事で、採れたてフキノトウでバッケ味噌をぱぱっと作り、クジラ缶&シカ缶などをぱかっと開け、これらを肴に乾杯!無事解禁できたし十分楽しめたというコトで、祝宴会となりました。
 思えば、川は解禁したのだけれど毎週大雨に祟られてしまい、全く釣りが出来ないというシーズンもあったのだから、まずは順調な滑り出しというところかな。
 解禁早々、沢山の魚達に遊んでもらいました。春の恵みに感謝!ありがとう!

THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.107/ T.TAKEDA

ページトップへ