エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング     vol.106 雪景色とクロカワゲラ/竹田 正

2020年02月28日(金)

仙台東インター店


 真っ白な雪面をよく見ると、冷たい雪をものともせず活発に這いまわる虫がいる。その虫はクロカワゲラという。雪虫と呼んでいる釣り人も多いだろう。暫し観察していると、まるで雪の中から生まれてくるかのように感じてしまうのだが、雪の下に埋もれた石からざらめ雪の隙間を縫って這い上がり、雪面近くで羽化に至るようだ。
 さて、冬から早春にかけて羽化する水生昆虫はユスリカや一部のカゲロウなどもいるが、盛期と比較にならないほどその種類も量も少ない。それゆえ、この時期のクロカワゲラはトラウト達を養ってくれる大切な存在といえる。もちろん、フライフィッシングにとっても重要種である。経験上、水温が4℃を下回るという状況であっても、クロカワゲラがまとまって羽化しているならばライズの釣りが楽しめるかもしれない。ニンフやウエットを使ってじっくり探るのもよいのだけれど、せっかくならドライフライに出てくるトラウトを是非とも見てみたい。そんなチャンスに出くわしたときのために、クロカワゲラにマッチするドライフライもボックスに忍ばせておく。



雪上を歩くクロカワゲラ。これは良く見かけるタイプ。

 
ごくたまに見かけるのはもっと小さく、ウィングの色合いも薄い感じ。同じ種類なのか別種なのか、個体差なのか?良くはわからないのであるが、大きさがまるで異なる個体を同時に見かけることがある。画像の右上角の個体が良く見かけるタイプ。


雪面に脱皮殻が残されていたり、脱皮殻が頭に付いたままの個体を見たりすることから、雪上でも羽化する感じがする。


ウェーダーに這い上がってきた。


良く見ると抱卵している。


シンプルなレースボディのダウンウィングCDCパターンとCDCのウィングをマラードで抑え込んだパターン。いずれのフライも視認性は悪いが、ハックルを巻いてある方がやや見やすい。


定番、フェザントテールニンフ。


ブラックミッジ。カネマラブラックを簡素化したウェットフライ。


パートリッジ&オレンジ。ボディはフロスではなくレースボディ。ソラックスに少量ダビングを施してパートリッジに広がりを持たせている。


 待ちわびた約半年間、いよいよ解禁である。積雪の渓流で釣りをするというのも気の早い話なのであるが、緑あふれる渓とは異なった趣、この季節なりの味がある。まだ誰も入りこんでいない雪面を踏みしめていくのも楽しみであるし、自然が織りなす不思議な造形に感じ入るのもまた楽しい。
 しかしながらこの冬は記録的雪不足となってしまった。いつもとは異なる展開でシーズン幕開けとなりそうである。さてさて、どうなることか。兎にも角にも早くヤマメやイワナに再会したい一心で、これから渓通いが始まる。


THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.106/ T.TAKEDA

← 前記事 vol.105   目次   次記事 vol.107 →
ページトップへ