エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング   Vol.108 モンカゲロウとフタスジモンカゲロウ/竹田 正

2020年05月15日(金)

仙台東インター店


 モンカゲロウは日本各地の清流や湖に広く分布しているカゲロウである。普段は砂に潜って生活している幼虫(ニンフ)は、羽化時期が近付くと活発に水中を泳ぐようになる。フタオカゲロウ類と同様、泳ぎが得意である。その羽化は水面で行われ、成熟したニンフが泳ぎあがり水面に達すると、パカッと背中が割れて亜成虫(ダン)がスルスルと水面上に出てくる。脱皮殻を脱ぎ捨てぽっかりと水面に浮かび上がるとともに翅が伸び切り、やがて飛び立っていく。亜成虫はもう一度脱皮を行い成虫(スピナー)となる。成虫は体長20mmかこれを上回り、国内のカゲロウ類のなかでも最も大型になる。
 私が釣り歩く東北の渓流では、その羽化期は5月中旬から6月上旬頃のことが多いが、標高の高い地域や北海道では6月中旬から下旬に見かけるようになる。羽化はまとまって起こることが多く、一週間から10日程度の期間に集中して行われる。

 
モンカゲロウ ダンの♂と♀ 

 
モンカゲロウのニンフと水面に浮かぶ脱皮殻。水面を流下する脱皮殻を貪り偏食しているマスは釣るには手強い相手となる。その独特の質感とライトパターンを表現し、決定的なイミテーションを作り上げるのは至難の業。これを達成したフライは未だ見たことが無い。


 底から浮いて来たり潜ったり、クネクネ泳ぎまわるニンフの姿が見受けられるようになると、いよいよモンカゲロウのフライで釣る季節の到来である。
 モンカゲロウは水面羽化を行い、羽化に要する時間は5~6秒程度掛っていると思う。なかには飛び立つまでに10秒以上水面にとどまることもある。集中的に羽化することが多いことと、大型で良く目立つため、魚たちの餌になりやすいといえる。羽化の時間帯は、通常午後から夕方にかけてであるが、雨の日には昼前から羽化することもあった。

 一方、良く似ているフタスジモンカゲロウは7月中旬から8月上旬に見かけるようになる。色合いはモンカゲロウより柔らかいクリーム色、大きさは15mm程度と一回りは小さい感じ。夏場に羽化期を迎えるカゲロウ類は意外に少ないので、釣りに絡む水生昆虫として重要かつ貴重な存在といえるだろう。羽化は夕方以降夜にかけて行われているので、羽化のあった翌朝やイブニングが釣り時のタイミングだろう。

 
フタスジモンカゲロウ ダン♀とスピナー♀
フタスジモンカゲロウは水質の汚濁に弱く、モンカゲロウよりも更にきれいな渓流域に棲息している。

 
モンカゲロウニンフとフローティングニンフ。湖面にライズが見られるが、ダンは見えない状況で、水面か水面直下に漂わせて魚を誘う。

  
リトリーブで探る釣りではモンカゲロウニンフの他、マラブーパターンとスイミングニンフ、ウーリーバガーを使用する。遠投後、湖流に乗せて流しつつ広く探るのにも向いている。ウーリーバガーのボディはプラスティックシェニールを用い、アトラクター力を高めている。

 
ディタッチドボディのダンパターン。ボリューム感とシルエットが鍵になる状況ではこれしかない感じ。スピーディな手返しが必要な時はシンセティックのウィングのフライを投げるが、CDCウィングの方が浮いていて雰囲気が良い。

 
パラシュートパターン。テイル部分に脱皮殻をイメージさせたパターン、モンカゲロウトレイラー。浮き方が良いのか、ライトパターンが効くのか、それとも脱皮殻が功を奏すのか。湖ではこのパターンが使いやすく安定して釣れている。渓流で使うならオーソドックスなスタイルで。


 以前良く通っていた阿寒湖でのコト。一斉にモンカゲロウのハッチが始まると、まるで帆を上げたヨットのレースさながら、おびただしい数のダンが湖面に浮いてきた。当然これにつられてアメマスのライズも始まった。これはもう一発でイタダキ!という状況に出くわしたのである。
 ライズめがけてエクステンドボディのダンパターンを投げ入れた。こちらの目にはフライも本物もまるで区別がつかない。しかし現実は違った。アメマス達は本物のモンカゲロウは食べるのだが、フライはさっぱり食べに来ないのだ。モンカゲライズの饗宴にお呼ばれしたものの、お預けをくらっている状態、そんな時だった。モンカゲロウトレイラーに結び替えてみたところ、なんともあっさりと釣れてしまったのである。
 その効果はテキメンだった。結果、雨の様なライズが止むまで、このフライで釣れ続いたのだった。

 一方、モンカゲロウのダンが見えない状況で、各種のニンフやドライフライを無視してライズを繰り返すアメマス達に遭遇したこともあった。遠浅の瀬で、随分と沖へウェーディングした上に、更にロングキャストが強いられるという状況だった。
 沖目に潮目が出来ているのだろう、ライズはその一点で起こっていた。水面か水面直下で何かを食べているのは明らかだが、なぜ釣れないのか見当がつかず、やや手詰まりになってしまった。ものは試しと、クィーン・オブ・ザ・ウォータースにドライシェイクを施して水面直下に漂わせてみた。するとついにアタリが出始め、工夫の末やっとの一尾を手にすることが出来たのだった。
 アメマスがモンカゲロウを捕食しているとして、いったい何をしるしに、何が刺激となって、摂餌行動を起こしているのか? この二つの経験は、そのきっかけを見つけることの大切さを教えてくれた。


  
普段、河川で使用するモンカゲロウのウェットフライ。マラード・ウィング・パターンとマラード・スパイダー・パターン。他にプロフェッサーやライトケイヒル、マーチブラウン等を結ぶ。

 
クィーン・オブ・ザ・ウォータース。パーマハックルが特徴のポピュラーなウェットフライ。オレンジのフロスボディは、濡れるとモンカゲロウのスピナー的色合いになる。モンカゲロウのダンにマッチさせるなら、イエローからアンバー系に仕上げたい。そしてこれを基に、阿寒湖での経験から導き出したウェットフライ。軽くするためドライフライフックを用い厚めのドレッシング、ダビングのボディにウィングはフラットにした。フロータントを施し水面か水面直下に漂わせやすいスタイルに仕上げてみた。現場調整できるように、ハックルは厚く巻きバルキーな仕上げにしてある。


モンカゲロウのスピナーフォール。夕方、産卵態勢に入った成虫は数メートルから十数メートル上空で群れを為す。ぱたぱた上がったり、すーっと下がったり、これを何度も繰り返しながら、徐々に水面へ下りてくる。


モンカゲロウスピナー♂とCDCウィングのスピナーパターン。ウェットフライと共にイブニングライズ狙いには必携のフライ。


20年前の阿寒湖で釣ったアメマス。モンカゲロウの釣りで、40~50cmサイズがコンスタントに釣れてきた。時折60cmを越えるサイズにも出くわした。毎年通いこむ程、身も心も奪われる刺激的な釣りだったことを思い出す。今となっては随分とご無沙汰してしまっているのだが、最近はどうなのだろうか。また訪れてみたいと思う今日この頃。

一日も早く、この禍が治まり、健やかな世の中になりますように。

THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.108/ T.TAKEDA

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