エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング     vol.93 春の嵐!やっと解禁のコト/竹田 正

2018年06月16日(土)

仙台東インター店

 
 昨年、禁漁になると同時にずっと待ちわびていた解禁が、これだもの…。
 
 2月28日。低気圧が接近中、解禁前日からの降雨で釣りが危ぶまれていたが、とりあえずの出陣。深夜に車を走らせた。早朝3:00頃より、雨はコンスタントに降り始め、次第に激しさを増してきた。夜明けを迎え川の様子を窺うとコンディションは良好。この時、躊躇することなく入川していれば、ほんの一時は釣りになっていたのだろうが、雨は激しさをさらに増してきていたため、少し様子を見ようと待機してしまった。ここが運命の分かれ道だった。午前中、雨はひるむことなく降り続け、見る間に川の水色が変化してくるのがわかった。昼頃にはようやくピークを過ぎ、徐々に小雨になってきた。川面を見ると絶望的な増水が始まっていた。当然、濁りもきつい。落ち葉や泥など、冬の間に積りに積ったものが一気に押し流されてきたのだ。どうにもならない、抗うことはできない。やるせない気持ちで一杯になった。
 さて、とりあえず雨はあがってくれた。だが、しかし、こんな川の状況、やることも無い。夜を待たずして、釣果無しで解禁祝の宴会とあいなった。解禁早々、出水となってしまった今日は当然として、川のこの様子では明日も無理だろう、ということでついつい酒も進んでしまう。釣り談義もホント尽きないもので、酔って眠くなるまで解禁宴会は続いた。翌日、水色が回復している沢筋もあったが増水状態には変わりなく、強風も吹き荒れていた。夕方まで釣り場を求めてさまよったが、結局竿を出すことは無く二日間が終わった。

 次の釣行を計画している頃、更に強力な低気圧がやってきた。おいおい、どうなっちゃうんだよと、川の様子が気になって仕方がない。WEBでライブカメラとテレメーター水位の確認が続いた。ドキドキ、ハラハラ。徐々に水位が上がり9日午前には河川氾濫危険水位を超えてしまったのだ。情報によれば、幸いにも甚大な災害にはならずに済んだようだった。この低気圧は想像以上の大雨を降らせた。大災害をもたらした2016年秋の台風10号に肉迫する勢いだったのだ。
 「2週続けての大出水だよ。どうしちゃったの、この春は。いったい何時になったら釣りができんのさ?解禁したのに釣りしていないよ!」という感じ。

 14日。少し水が引き始めたものの、依然として水位は高い。それでもなんとか釣りになるだろうと川へと足を運んだ。あちらこちらで先行者が目に入る。予定していたポイントはことごとく入渓済み。同じことを考えている釣り人も多いらしく、どこかに入れるところはないものかと、思案。車で川筋を流しながら、以前楽しい思いをした滝下を思い出していた。今日はポイント移動もままならないだろうし、滝壺の淵をじっくりと探ってみるのも良いかもしれない。早速向かってみると先行者は居ない様子。ラッキー!これでやっと今シーズン初の釣りができる!
 身支度を整え、そそくさと川辺に下りた。流れを歩く感触が心地良い。増水のお陰で滝は迫力満点で、普段より格好良く見えた。淵にも強い流れが生まれて躍動を感じる。これは釣れそうだ。すると、淵の流れ出しで小さな波紋が広がった。すかさずドライフライを流してみると、見事に出た!のだが鈎掛かりしなかった。再度、そっと流してみるとまたも出たのだがやはり掛らなかった。水温は7℃。この時期にしては十分なのであるが、やや活性が低いのか、フライの吸い込みが弱い様子だった。そこでフライをヘアズイヤーニンフに結び替えマーカーを取り付け、ドライに出た流れの筋を探ってみた…。



ニンフの一投めで目印が飛んだ。こと更に嬉しい今シーズン初のヤマメ。ちびっこ。パーマークが7個の美形だった。



目の前の駆け上がりを流してみると、すぐさま目印が飛んだ。2尾めはイワナだった。



小さいけれど、これからぐんっと育って我々釣り人を楽しませてくれる大切な存在。



平水時と比べると雄々しい雰囲気になっていた。



パーマークが整った端正なヤマメ。その後もヤマメが釣れ続いた。時に良型のイワナもニンフを咥えてくれ、やり取りを堪能。しかし、程無くしてばらしてしまった。



イブニングはドライフライに反応が良くなった。日当たりのよい開けた場所に移動して、ヤマメとイワナをキャッチ。

 やれやれ。やっと解禁。ハラ・ドキ、ワクワクの季節は、もうすでに始まっている。 
 
THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.93/ T.TAKEDA

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