エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング     vol.95 5月のヤマメ釣り。里の本流と支流。/竹田 正

2018年07月14日(土)

仙台東インター店


 5月は忙しい。なんてったって、大好きな季節の始まりだから。新緑の季節は過ぎ去り、山々は深緑へと色濃く染まってくる。今この時を楽しまずにはいられない。山々と同様に私の心も山釣りの気分に染まっていくのである…。
 
 5月前半戦。ドライフライで瀬をたたき上がるのに良い季節、GWが明けてすぐのコト。本流域。農作業をしているおばさんに挨拶しながら、まだ田植え前の田んぼの脇より入渓する。
 早速のライズが有り、第一投…。あれ?出るけど掛らないじゃん!少しずつ釣り上がりながらライズを打っていくが、いずれも掛らない。どうやら今一つ、フライパターンがマッチしていないようだ。メインのハッチはミドリカワゲラ。暫く観察していると、水面で羽ばたいているのは食われていないように見えた。#14イエローのパラシュートで釣って来たが、ここでスタンダードハックルの#16ミドリカワゲラパターンに交換した。すぐさま結果が出始めた。サイズとカラーのマッチ、パラシュートより繊細な浮き方、そしてドラッグフリー。これが決め手らしい。このフライに交換してからは、ばっさりと食ってくることが多くなり、瀬からテンポ良くヤマメが顔を出してきた。


ミドリカワゲラのアダルトとそのフライ。


本日の一尾め。


小さいのだけれど、パーマークの配列が落ち着いていて良い感じ。


体側や尾鰭の色付きが良い感じ。パーマークは8個、標準形。


パーマークが9個の個体。腹部斑紋が少なめでぼやけ気味。


次もパーマークが9個のちびっこ。背部黒点が少し多い感じ。


パーマークにやや乱れを感じる。放流魚だろうか。


腹部斑紋がかなり薄い。


午後になると、ヤマメの反応が鈍りだした。釣り始めに結んでいたパラシュートに交換してみたところ、反応が良くなった。ヒラタカゲロウのハッチに連動してのことか。


視界一面に咲き乱れるツツジも良いのだけれど、深緑のなかに控えめに咲き誇るツツジも良いよな~。


淵が連続するようになると、体型の良いヤマメが出てくるようになった。


沢のヤマメを思わせる個体。背部黒点と腹部斑点が少なくぬるりとした印象が特徴的。


これから育つ気配がムンムンと感じられる。ヤマメの成長は早い。秋が楽しみ。


渓相が良くなり大物が出る気配が濃厚になってきた。狙い通りに一発出たものの、ギランと身をひるがえしてバレテしまった。身悶える様な悔しさである。さて、気を取り直してまずまずのポイントが現れた。枝沢の流れ込み。パリッと引き締まった良いヤマメが出た。この枝沢をたどって退渓。翌日に備えて早めの晩飯。この日もワサビもいただきました。さっと湯通し、刻み込んだ後醤油を垂らして…。いいものです。




二日目。支流のまた支流、ヤマメとイワナが混生する沢に潜り込んだ。昨日結んだままのフライでスタート。すぐにちびヤマメとイワナが遊んでくれた。


ぽんぽんぽん、と釣れ続く。


柔らかそうな朴葉。味噌を腹に詰めたイワナを包んで焼きたい感じ。


気付かずに触れてしまうと痛い!アイコ。癖のない美味しい山菜。


あらら、パーマークがかなり多い。11個。


こういう感じのヤマメが釣れるとほっとする。


赤みが強いが、オオクママダラカゲロウか。まとまりなく、パラリとハッチしてきた。でもフライは替えない。白斑に縁取りがあり、わりと明瞭、のイワナ。 リズミカルに斑紋が並ぶかわいいヤマメ。


落ち込み脇対岸の巻き返し、いかにも出そうな感じのごく小さなスポット。ヘチの奥に潜んでいたイワナ。アメマスの色が濃いのだが、良く見ると薄い着色斑がある個体だった。巻き返しでなかなかフライを留まらせずにいたが、結構なサイズに見える魚が一瞬姿を見せた。繰り返し投げ込んでいるとティペットが苔に引っかかりフライは宙ぶらりんに。そのまま少し待っていると、堪らんとばかりに、ぶら下がりフライにこのイワナが飛び出した。


さも無いチャラか底石の良いところではヤマメが勢いよく出てきた。攻めにくい淵ではイワナと言う感じ。


コンディションの良いイワナが潜むクロスバーポイント。俄然やる気が出る。タイトなラインで細いループを作り、間隙を突いてフライを送り込む。


この日最後の一尾。ふっくらさん。

 このあと岩盤滑床小滝が現れた。疲れもあってか、これを遡行するのは危険を感じたので、潔く退渓した。 車に戻るとじっちゃんが草刈りを終えていたところ。「ども、こんちわ。いつもお邪魔してすみません」「お、まだ来でらしたんなと見でたんだ。んで、どだ、釣れたが?」「おかげさんで今日も楽しめました~」「こごの淵は釣れたんだが?」と眼下の大淵を指さすじっちゃん。「いや、この淵はイワナがいっぱい見えておもしろいんだけれど、釣るの、難しいんだよね」「んだべな。いっつも誰がつっでっがんな、云々○X△!☆Ω!#♪♭!…」だんだん何言っているのか、懐かしの気仙語が溢れてきて聞き取れなくなってきた。淵横のいつも車をとめている付近一帯はじっちゃんの土地なのであるが、一昨年の洪水では車を止めている道にまで水が上がってきて、土手が崩れて、畑がああなってこうなって、そんなこんな…と言う話のようで、なんだかいろいろあって大変だったということでした。
 さてさて、この2日間。GW明けにも係わらず、沢山の魚が遊んでくれるのだから、いつ来ても素晴らしい川だと思う。度重なる水害などあれども、いつまでも健やかな川であって欲しいと願っています。ほんと、ありがとう。

THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.95/ T.TAKEDA

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