エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング     vol.83 2016第15回寒河江川鮭有効利用釣獲調査/竹田 正

2016年11月26日(土)

仙台東インター店

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 多くのお客様から、「あれ、止めちゃったの?」(ごめんなさい)とか、「意外と楽しみにしてたんだぞ~」(有難うございます)、「また始めてよ」(ホントっすか)、「なんか、おめ、具合(ぐえ~)わりぃのか?」(あ、ま、ちっと)、「これ。釣り、行げねんだろ」(あ、すんません。行ってます。)などなど、嬉しくも有難い沢山のお言葉を頂いておりました。この春に一度は再開したものの、基幹ホームページのリニュアル等に伴って更新が滞っておりましたが、ようやく再開の目処が立ちました。
 さて。過去の記事ももう見られないことだし、記事を書き始めた頃は書くこと無くなったら適当にや~めよ、と思っていたこともあり…。どうしょっかな~。新たに切り口を変えて再出発するか~。あれやこれや、うんぬんかんぬん…。様々と思いを巡らせました。さりとて年月かけて続けてきたことでもあるし。まあ、せめてキリのいいところでvol.100まではやってみようか。ん、すると、あと一年か二年くらいで終了ということになるか。いやいや、やっぱり書くこと無くなったら適当に終わりにすればいっか、その時はそのときだっちゃ、と思うに至りました。ということでタイトルやフライ・フィッシングにまつわる私の勝手な思いや思い込みはそのままに、本日再開いたします。可能な限りの定期的な更新を心がけますので、今後もまたお付き合い頂ければ幸いです。
 さてさて、前置きが長くなりました。長文は今風じゃ無いですね。ホント。それでは今回のネタ。なんと。ん、奇しくも?初回と同じくサーモン・フィッシング!での再会、いや、もとい!再開となります。「やらせじゃね~の~」「ただサボッてただけじゃんか、おめ」「なんかあざとい~い~」。ああ、お叱りが聞こえます、そんな気がします。何卒、そのようには思わないでくださいね。自分の釣りは見た目には適当ですけれど(仕事もだろ!というツッコミは無しでお願いします)、内幕の本心は、意外と、何時だって、本気ですよ。なんてね。ハラホロヒレハレ、ハラホロハラ鰭!
では、お待たせいたしました。

エッセンス オブ フライ フィッシング & エッセイ オン フライ フィッシング vol.83 2016第15回寒河江川鮭有効利用釣獲調査 です。
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 とうとう渓流が禁漁となった秋、私にとっての楽しみといえばこれ。寒河江川鮭有効利用釣獲調査。毎年お世話になっていますが、第15回の今回もきっちり参加してきました。
 漁協の方々の話を集約すると、水量不足のためか、今年の遡上は今のところ分散型でやや少なめの様子とのこと。東北太平洋側は8月末から台風・大雨の連続で各地で被害続出という厳しい状況だったのだけれど(実際のところ、9月終盤戦の私の釣りは、それらに伴い禁漁ぎりぎりでやっとこさできた、という有様だった…)、この辺りではそれ程でもなかったらしく、意外にも水位が低い状況がずっと続いていたそうだ。
 しかし、である。受付を済ませて川に下りてみると、チャムサーモンが瀬尻にひしめいているではないか。うにゃうにゃしている水面を見ていると、確かに水は少ないのだけれど、言われるほど悪くない状況なのではないか、そう思えてきた。むしろ、まずまず良い、くらいに見えたのだ。すると、体が勝手に、チャムサーモンの強烈なファイトを思い出してきた。喉が鳴り、頭がクラクラするのだ。いわゆる釣り人ホルモンの噴出である。これが意外にも始末が悪い。ただ酔うだけなら、まあ良いのだけれど…。


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 日の出とともにロッドを振るのは気分爽快である。しかもこの空の色!ホルモンに酔っていることもあるためか、毎度のことだが釣りをやっていて良かった!と思う瞬間である。イイ気分。しかし、釣りの方はと言うと、淵狙いから始めてみたものの、これといって良いアタリが無い。いや、全く何もないのだ。周囲を見渡すと瀬に続くヒラキから早瀬になるポイントに空きがあるのが見えていた。ポイントを見切るには少々早すぎる気もしたが、空を手繰るような15分を過ごしたところで、早々に移動を決めた。このような場合、経験的に言って、「急がば回れ」では失敗すること多し。良い時間帯のたった15分は、釣れない時間帯の1時間以上にも匹敵、するのだ。素早い決断が成否を分ける。「狂奔」する訳ではない。もちろん、幸せホルモンに酔っているかもしれないが。


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 釣り開始から約30分。移動先は産卵を強く意識したチャムが集まりやすいポイントのため、やや釣りにくそうだった。水位が低いため良いポイントは少なく、贅沢を言える状況ではなかった。しかし、と言うか狙い通りと言うべきか、ポイント移動をしてすぐに一尾めがやってきた。メスだった。ネットが使いにくい浅瀬では吊り上げでさっと取り込む。フライはユーマーのチューブで仕上げたテンプルドッグのパターン。口角を捉え、がっちりとフッキングしていた。チューブフライはチューブの素材やサイズで沈み具合をコントロールできることが強みである。


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 続いての2尾め。流れの早い深瀬を探った。フライは25mmカッパーチューブに巻いたラッビットスパイダー。口角にフッキングならバレ難いが、上顎の口先にやっと引っかかっているだけの危ういフッキング。遡上したチャムの口の周りにはもうほとんど肉は残っておらず、堅い骨ばかりなのである。チューブフライは常にフレッシュなフックに交換できることも利点である。石に掛りやすい瀬釣りではハリ先はすぐに傷むもの。


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 澄んだ空気の中、眩しい秋空の下で。めったに無い程の天気の良さに、爽快な気分で釣り続ける。キラキラと輝く水面をチャムが割って出る姿が印象的だった。この瀬周りはチャムが「ごちゃっと」いる部分があって、どうしてもスレ掛かり気味になってしまうのだが、スレ掛かりは上手くあしらって鈎を外し、釣り続ける。この様な時は「雑音のアタリ」と「本物のアタリ」を見分けることが重要である。スレ掛かりでのファイトは良いことは何も無い。ふと、朝に入った淵に目をやると、意外にもポイントが空いているではないか。釣れていないのかな?これまでの状況から鑑みて釣れるかどうかの疑念もあった。しかし「雑音のアタリ」にはさすがに疲れていたところだった事もあり、ダメ元で朝の一番に釣った淵に戻ることにした。


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 広い!のびのびとキャスティングを楽しみながら淵尻の駆け上がりを狙っていると、気持ちの良いアタリが訪れた。フライは突先にちょこんと掛っていた。フックは口顎の骨にかぶさるわずかな皮と筋に引っかかっているだけで、貫通はしていない。つまり、ファイト時にテンションが緩むとすぐにバレてしまう。さりとて強引なだけのファイトではフックがひっかいて筋か皮が切れてしまい、これもまたバレてしまうのだ。従って、ラインを通して伝わるアタリの質感を感じ取り、どこにフッキングしているかを想定して積極的にやり取りをすることが肝要となる。ノイズが無ければアタリは明確である。


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 スレ掛かりを思わせるアタリはほとんど無かった。そのお陰で、緩いラインのテンションを指先に感じつつ、フライのスイングコントロールとアタリを感知することに集中できた。瀬で釣っていた時よりも、更にスリリングな緊張感を楽しむ。次は何時くるのか。今か、今か。幾度もキャスティングを繰り返す。女神が微笑めばその時は何れ訪れる。ぐいっと、格好良く鼻が曲がった野性味溢れるオス。ああ、待っていたよ!これが釣りたかったのだ。
 このサイズになると、ツーハンドロッドでのネットインはスリル満点になる。無事、セルフでの取り込みに成功すれば、その充実感と達成感、それはもう、ひとしおなのである。せっかく極上のスリルと喜びを味わえるのに、詰めの取り込みを人に任せるなんて、ナンセンス。不安、緊張と興奮、次いで安堵と大きな喜び!それらが一気に押し寄せる!この瞬間!これを想像して欲しい。ホントもう、勿体ない!お化けが出るぞ!ああ、また幸福ホルモンに酔いたい…。


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 陽が昇り切ってもアタリは続き、数尾をキャッチすることができた。その中の一尾、少し小ぶりなメス。平均的なサクラマスと同等サイズ。これくらいなら15ftロッドでもするりとネットインする。
  ベストの胸に付けている黄色の物体はCASIOのウェアラブル・カメラ、EXILI MFR100。水辺でのリアルなフィッシング・シーンを手軽に記録できるタフなデジタルカメラで、ハイビジョンでの動画撮影も楽しめる。アウトドアでの楽しみを大きく広げてくれる優れもの。FR100で撮影した今回の映像を店頭で流しているので、ご興味のある方は是非ご覧ください。(但し、動きがあるので目が回るかも。渓流のイワナ釣り・ドライフライ編もあります)。

 さて、今回実際に釣りをしてみた感想。やはり昨年は当たり年で、今年はまあまあ並みの遡上状況かな、という印象。それであっても昨年並みのヒットの連続で、でれっと休む暇も無いくらい忙しく釣り続けた。終わってみれば期待通りお腹一杯、胸一杯、の至福の時を過ごすことができた。少し気だるい疲労感もなんとも心地良いもので、アフターの温泉とビールがこれまた最高でした!と付け加えておこう。
 どこまでも突き抜けるような青空にも恵まれ、寒河江川と母なる川へ帰ってきたチャムサーモン達に感謝!です。

THE ESSENCE OF FLY FISHING & THE ESSAY ON FLY FISHING vol.83 / T.TAKEDA

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