タカオの旅日記~山旅編  六甲全山縦走~

2019年12月20日(金)

名古屋守山店

新田次郎の「孤高の人」を読んだ。

孤高の登山家、加藤文太郎の生き方に感銘を受け、彼が登山を学んだ六甲山、そして彼が始めたといわれる六甲全山縦走というコースにとても興味が湧いた。

六甲全山縦走は今では毎年大会が行なわれている人気のイベント。

神戸市須磨から六甲全山を縦走し、宝塚までをつなぐルートで総距離は公称56kmのロングトレイルだ。

コースタイムだけで見ても17時間以上かかるのだが、途中にキャンプ場などはない為ボクの好きなテント泊も難しそう。とはいえ日帰りではなかなかハードなコース。

それでも加藤文太郎と同じ様に1日で歩きとおしてみたいと思いが強くなり、今回、神戸に訪れる機会が出来たので挑戦してみることにした。

12/4  5:30

JR神戸線の始発で塩屋駅に到着した。

 
夜明け前の暗いなか住宅街をヘッドランプをつけて歩く、ちょっと怪しい中年男。

入り組んだ道を毘沙門堂への看板を目印にすすむ。

民家もなくなり舗装路から登山道に。

「六甲全縦走路」の標識を発見。

気温は6℃、さすがに寒い。

夜明けが待ち遠しい。

 
「ふんすいランド」が見えてくると空が明るくなってきた。

振り返ると街と海が良く見える。

 
旗振山(252M)の茶屋を抜け、気持ちの良いトレイルを歩く。

 
鉄拐山(234M)からは神戸の街が一望。夜明け直前の素晴らしい景色が広がる。

 
そこかしこにある古い石の標識は昭和初期に作られたもののようだ。

加藤文太郎もこの標識を見て歩いたのだろうか・・・

 
林道からまた舗装路に入るとその先には公園がある。朝の散歩を楽しんでいる方が多い。

公園を抜け長い下り階段の先には高倉台団地。

 
団地街の中心を歩く。早朝なので営業はしていないが、商店街もある。

団地を抜け、陸橋を渡る。

 
400段の急な階段を登ると栂尾山(274M)に到着。山頂からは歩いてきた高倉台団地が見える。

   
横尾山を過ぎると岩場の尾根が出てきた。この辺りは岩場の尾根歩きなどもあり須磨アルプスと呼ばれている。

荒々しい岩場と眼下の景色が標高の割りに山の迫力を感じさせる。確かにアルプスの景観のようだ。

ゴツゴツした岩場は景勝地として有名な「馬の背」。

 
山を下り、再び住宅街を歩く。

電柱やフェンスには「六甲全縦」の標識があり分かりやすい。毎年恒例の大会だけに標識もしっかりと設置されているようだ。

郊外に出てまた登山道に入る。

 
高取山(328M)へ登ると神社がある。荒熊神社の鳥居越しに見える海と街の景色が素晴らしい。

先には高取神社も近くにある。参拝客に混じり登山装備の人もちらほらと見かける。

 
山と街がとても近い、距離だけでなく人々の暮らしの中に自然と山があるような感じだ。

山を下り、住宅地を歩く。

「六甲全縦」の標識のついた電柱には、なんと「源平町」。

後で調べたらこの辺りは源平の戦場だったそうだ。

そういえば山や地名の由来に「平家物語」に登場する人名や合戦にまつわるな名称が多いことに気が付いた。

かつてはここで源氏と平家の壮絶な戦いがあり、有名な武将たちが駆け回った地なのだ。

 
 
「六甲全縦」の標識は意識しないと見逃すこともあり何度か遠回り。

住宅街をウロウロして、やっと神戸電鉄有馬線の鵯越(ひよどりごえ)駅に着いた。

朝5時半から歩き始めて5時間。陽射しも強くなり体力の消耗が感じられる。

けっこう疲れたな・・・

そこへ有馬温泉行きの電車がやってきた。

「この電車に乗れば有馬温泉だ。せっかくだから行ってみよう。今日はもう疲れたし残りは次回挑戦すればいいじゃないか」

そんな心の声が聞こえてきた。

甘い言葉に気持ちが揺らいでいると

「いや今回の目標は全山を1日で歩き通すことじゃないか!頑張るんだ!」

ともうひとつの声に叱咤激励される。

ちょっと迷った末、加藤文太郎に憧れて歩き始めたことを思い出した。彼に負けないようにボクもがんばろう。

 
ホームの横を過ぎて山道に入ると、やがて川沿いの舗装路に出た。アスファルトのなだらかな登りが意外と足に堪える。

 
急登をやっとの思いで登ると大きなアンテナ塔が見えた。

菊水山(458M)に到着。陽射しが強く12月とは思えない暖かさ。朝とは大違いだ。気温は20度近くありそう。

登山者は10人近くいるだろうか。人気の山のようだ。ベンチやあずまやもある。

 
山頂の全山縦走路のマップをみてがっかり。まだ1/3も歩いていないのか!?

ここで休憩しようかとも思ったが予想よりも遅れている。先を急ごう。

 
天王吊橋で車道を横切る。

   
再び急な山道を登ると鍋蓋山(486M)の山頂。

神戸の市街地と海の景色が素晴らしい。

 
なだらかな山道をしばらく下ると大龍寺の参道に合流。そのまま参道を歩くと立派な門が現れた。「別格本山 大龍寺」とある。由緒あるお寺のようだ。

 
まるでレッドカーペット。道一面が落ち葉に覆われている場所があった。

紅葉も終わり、そろそろ山も冬支度かな。

 
 
トイレと自販機がある市ヶ原で舗装路に出てまもなく山道に入る。

「稲妻坂」を越えると次は「天狗道」

 
急な登りを行くと反射板がみえた。山と高原地図によるとここが中間地点。時刻は15時。約9時間で半分か。。。

あれだけ陽射しが強く晴れていて暑かったのに、気がつくと空は一面の雲で夕方のように薄暗い。で夕方のように薄暗い。風も強く肌寒くなってきた。

 
摩耶山(699M)に到着。

 
少し歩くと掬星台。

ここは「手で星が掬(すく)える」ぐらい高いことから、この名が付けられたとのこと。日本三大夜景に数えられる場所だけあり、昼間でも絶景だ。観光客も多い。

トイレや自販機もあるので、少し景色を楽しみ休憩する。

 
オテルド摩耶という宿泊施設の脇をとおり登山道、そしてまた舗装路を歩く。

この辺りは湖や池もあり、なにやら観光地の雰囲気。何度か登山道と舗装路を行き来する。

 
「神戸市立自然の家」の横を歩き登山道に入り、再び舗装路を横断、登山道から舗装路に行くとやがて別荘地に出た。

 
 
別荘地を抜けYMCAの横を歩く。

 
時刻は17時。12月なので日が落ちるのは早く、眼下の景色も美しい夜景になった。

 
イルミネーションで装飾したおしゃれなお店や施設も現れてきた。

こんなところで食事したらさぞかし素敵な気持ちになるだろうな。

 
道路沿いに食べ物が購入できる最後の場所という商店が現れた。食べ物には余裕があったので「運動による体の疲労をやわらげる」とコメントが書いてあったスポーツドリンクを購入。これで宝塚まで頑張れますように。

 
記念碑台を過ぎ、舗装路を歩き続ける。

すると、なにやらライトアップされた施設とイルミネーション。更にカップル達。

六甲ガーデンテラスに着いた。ここからの夜景も素晴らしい。

キラキラしたイルミネーションに囲まれてまるで夢の世界に迷い込んだようだ。

何か場違いの雰囲気のボクはとっとと退散しよう。。。

 
きらびやかな世界をあとに山中に入る。ヘッドランプの灯りだけが頼りの世界だ。

真っ暗な山からみる夜景はまた格別に綺麗。

 
そろそろ六甲山最高峰が近くなってくるはずだが、真っ暗でどこに最高峰があるのかわからない。

標識どおりに林道と舗装路を何度か行き来するがいつになっても到着しない。

同じような景色ばかりで、もしかして同じところをぐるぐると廻っているだけじゃないかじゃないか!?と思ったら鳥肌がたってきた。

コンパスと地図で確認するが、方角は大丈夫そうだ。不安な気持ちのまま先に進むとようやく六甲山最高峰(931M)に到着。

良かった~  真っ暗で周りがどうなっているのか分からないし、夜景もあまり見えないけれど一安心。

安心したら空腹を感じた。

宝塚まで頑張れるようにとおにぎりを取り出したがご飯が冷えきって固くなっていた。食べたら頑張る気持ちが萎えてきそうだったので止めて代わりにカレーパンを食べる。

揚げてあるので固くなることもなく美味しかった。冬の行動食にはおにぎりのような水分の多いものは固くなってしまうので油であげたもののが良いってことを思い出した。

そういえば加藤文太郎も油であげた饅頭「フライ饅頭」を食べていたと書いてあったな。

 
間違えて有馬に向かわないように「宝塚」を目指す。

 
車道を歩く。トンネルの中に芦屋市と西宮市を分ける標識。西宮市内に入った。

 
舗装路の道路の脇に「六甲全山縦走」の標識があり、林道に入る箇所を示してくれているが、標識が小さくまた暗闇の中でヘッドランプの灯りだけだと見落としてしまい何度か通り過ぎてしまった。

山中に入りひたすら真っ暗な道を歩き続ける。この辺りは東六甲縦走路と呼ばれる。

夜だからという事もあるが、最高峰以西にあったような街の匂い、人の気配は一切感じられなくなった。

夜が更け、昼間にはあれだけ鳴いていた鳥の声も一切聞こえない。

聞こえてくるのは自分の足音、息遣い、ザックや衣服の擦れる音。時々立ち止まると何も音がしない。耳がキーンとしてくるような無音。暗闇で静寂の中、ひたすら山道を歩いていると自分がケモノになったように感じる。

そんな中、自分の足音とは違う、藪を掻き分けて歩く音がした。鹿かな、と思いヘッドランプを向けると大きなイノシシ!

一匹だけでなく他にもいる気配、子供連れだと危険だという事を聞いていたので急ぎその場を離れた。

恐かった~  初めてイノシシに遭遇した。「イノシシに注意」の看板があちらこちらにあったけど六甲山ってやはりイノシシが多いんだ。

 
比較的なだらかながらも木の根や岩場もある。足元に注意しながらも時々現れる標識を見逃さないように注意しながら歩く。

ようやく塩尾寺(えんぺいじ)に着いた。

 
ここからは舗装路とはいえ、真っ暗な道を歩くと住宅地に出た。宝塚駅の標識を見つけてやっと一安心。

22時半  駅に到着。

やっと着いた~   記念に宝塚駅の写真でも撮っておこう。

「宝塚南口駅」  あれ???

地図をみると宝塚の隣の駅。

どうやら道を間違えてひとつ手前の駅に着いてしまった。山の中ならともかく住宅街でも道を間違うなんて・・・

改めて自分の方向オンチぶりにがっかり。

それでも行動時間は16時間半。総歩行距離は約48㌔。

目標の15時間は過ぎてしまったけど、一日で歩きとおすことがで出来て達成感はある。

とても疲れたけど良く頑張ったなあ。少しは加藤文太郎に近づくことが出来たかな。

さて、阪急電車で神戸に戻ろう。

はっ!そういえば加藤文太郎はここから更に神戸までの道のり50㌔を歩いて帰宅したのだっけ。

 
恐るべし・・・孤高の人、加藤文太郎。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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